クアルコムの蘭NXP買収、欧州委が本格調査

欧州委員会は9日、米半導体大手クアルコムがオランダの同業NXPセミコンダクターズを買収する計画について、EU競争法に基づく本格調査を開始したと発表した。両社の取引を認めた場合、携帯端末や自動車向けの半導体市場で公正な競争が阻害され、価格上昇などの弊害が生じる恐れがあると判断した。欧州委は買収計画を精査し、10月17日までに結論をまとめる。

クアルコムは昨年10月、総額470億ドル(負債引き受け分を含む)でNXPを買収すると発表。4月末に欧州委に買収認可を申請した。取引が成立すると、半導体業界の買収としては過去最大規模となる。

クアルコムは携帯端末用半導体の世界最大手で、同事業が売上高の約9割を占める。一方、NXPは2015年に米フリースケールを買収し、車載半導体分野で世界最大手に浮上した。さらに、スマートフォンの機能を利用した電子決済サービスなどに使われる近距離無線通信(NFC)技術用のICチップなどにも強みを持つ。

欧州委はこれまでの調査から、買収計画を認めた場合、無線通信を制御するベースバンドチップのほか、NFCチップや自動車用半導体などの分野でもクアルコムの支配力が強まり、ライバルが市場から締め出されて価格上昇を招いたり、技術革新が妨げられる恐れがあると指摘。さらにクアルコムとNXPの製品をセットで提供することで、特許のライセンス料が引き上げられる可能性があるとの見方を示している。