J&Jのアクテリオン買収、欧州委が条件付きで承認

欧州委員会は9日、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がスイスのバイオ医薬品大手アクテリオン・ファーマシューティカルズを買収する計画を承認したと発表した。ただし、両社の事業が重複する不眠症治療薬の開発に悪影響が及ばないよう、J&Jが提示した改善策を確実に実行することが承認の条件となる。

J&Jは1月、アクテリオンを約300億ドルで買収する計画を発表した。アクテリオンは希少疾患に重点を置いて研究開発を進めており、主力の肺動脈性肺高血圧症治療薬の売上高は2020年に46億ドルに達するとみられている。アクテリオンの買収が実現すると、J&Jは循環器系疾患分野の事業を大幅に強化できる。

両社は取引の一環として、アクテリオンの研究・開発部門を独立企業として分離し、株式をスイス証券取引所(SIX)に上場することでも合意した。J&Jは新会社「イドルシア(Idorsia)」の株式16%を取得し、将来的に出資比率を32%まで引き上げる権利を獲得した。

欧州委は買収計画の審査にあたり、J&Jとアクテリオンが競合関係にある多発性硬化症と不眠症治療薬の2分野に着目した。多発性硬化症の治療薬に関しては、J&Jが中・東欧市場で販売している米バイオジェンの製品と、開発段階にあるアクテリオンの製品はそれぞれタイプが異なるため、買収によって市場に影響が及ぶことはないと判断。一方、不眠症の分野では両社とも新規の行動メカニズムに基づいた治療薬の開発を進めているため、競合関係にある両社の合併が実現すると、同分野でJ&Jの支配力が強まって競争が阻害され、開発のペースが鈍るなどの弊害が生じる可能性があると結論づけた。

J&Jは欧州委の懸念に対応するため、新会社イドルシアの戦略決定に自社の影響力が及ばないようにするための改善策を提示した。具体的には◇イドルシアに対するJ&Jの出資比率を10%以下に抑え(J&Jが筆頭株主にならないことを条件に、将来的に最大16%まで引き上げ可能)、取締役も派遣しない◇J&Jと不眠症治療薬を共同開発しているミネルバ・ニューロサイエンスに対し、新たに世界規模で開発を進める権利を付与すると共に、欧州市場での売り上げに対してMinervaから特許使用料を徴収する権利を放棄する――の2点を提案。欧州委は一連の措置によってJ&Jとアクテリオンの統合後も不眠症治療薬の分野で競争が維持され、革新的な製品の開発が推進されると判断した。

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