独製薬大手のメルクは20日、がん免疫治療の分野で新会社iオンクトゥラ(iOnctura)を設立すると発表した。免疫チェックポイント阻害剤というタイプの抗がん剤の治療効果を高める医薬品を開発する。
スイスのジュネーブにiオンクトゥラを設立する。新会社ではメルクの新薬候補2つと、英がん研究所の商業部門であるキャンサー・リサーチ・テクノロジー(CRT)の新薬候補3つの開発を行う。CRTは協力の見返りとして、◇iオンクトゥラ株を一部、譲り受ける◇新薬開発と進捗と承認に応じてマイルストーンを受け取る◇市場投入した場合は売り上げの一定比率を受け取る――ことになる。
免疫細胞が活性化してがん細胞などと戦う際に免疫が高まり過ぎると健康な細胞も傷つけてしまうことから、免疫細胞には過度な働きを抑制する「免疫チェックポイント」という機能が備わっている。がん細胞はこの機能を逆手にとって免疫細胞の攻撃力を抑え込む(がんの免疫逃避)。
免疫チェックポイント阻害剤タイプの抗がん剤はがん細胞のこうした働きを阻害し、免疫の働きにブレーキをかけさせない医薬品だが、第一世代の製品ではがんの免疫逃避を有効に阻害できないケースが多いことから、iオンクトゥラはがん細胞が増殖していく上で重要な場所である「腫瘍微小環境」で免疫を抑制している“犯人”に働きかける医薬品を開発。免疫チェックポイント阻害剤の効果を最大限に引き出せるようにする考えだ。