欧州委が「汎欧州個人年金商品(PEPP)」創設を提案、公的年金制度を補完

欧州委員会は6月29日、EU域内のどこでも同じ条件で販売される標準化された「汎欧州個人年金商品(PEPP)」の創設に向けた規則案を発表した。少子高齢化の進展や低成長を背景に公的年金制度を取り巻く環境が厳しさを増すなか、個人年金の選択肢を増やすことで、EU市民が退職後に備えてより効率的に貯蓄できるようにすると同時に、個人年金保険市場の成長を促すのが狙い。今後、欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。

欧州では今後50年で就労者に対する年金生活者の人口比率が現在の2倍(4対1から2対1)に拡大すると予測されている。一方、個人年金保険の加入率は就労人口の27%にとどまるうえ、国によるばらつきが大きく、東欧諸国では加入できる年金商品がほとんど提供されていないのが実情だ。欧州委はこうした現状を踏まえ、既存の公的年金や企業年金を補完する新たな選択肢として、共通ルールに基づきEU全域で提供される個人年金の創設を検討していた。

欧州委の提案によると、保険会社、銀行、企業年金基金、資産運用会社などの金融関連企業は欧州保険年金監督機構(EIOPA)の認可を得てPEPPを開発し、EU全域の消費者にオンラインで商品を販売することができる。PEPPの運用者は高いレベルの消費者保護と透明性の確保が求められ、EU市民は居住地に関係なく、自由に加入先を選定・変更することが可能。域内の他の国に引っ越した場合も引き続き加入契約を維持できる。

一方、欧州委はPEPPの普及を促すため、各国で販売されている既存の個人年金保険と同等の税優遇措置を適用するよう加盟国に勧告。さらに個人年金にかかる税金について加盟国間で情報交換を進め、ベストプラクティスを共有するよう求めている。

欧州委によると、EU内における個人年金保険市場の規模は約7億ユーロ。公的年金制度に対する不安の高まりを背景に、市場規模は2030年までに2倍に拡大するとみられているが、欧州委はPEPPの創設により、3倍の21億ユーロに達すると予測している。

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