加盟国のウーバー業務停止命令、EU裁法務官が支持

EU司法裁判所の法務官は4日、米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズを通常の旅客輸送事業者と位置付け、EU加盟国は自国の法律に基づき、欧州委員会への事前通知なしに業務停止を命じることができるとの見解を明らかにした。ウーバーは自らを旅客輸送事業者ではなく、「情報社会サービス」企業と位置づけ、域内のどこでも自由に提供できるはずのデジタルサービスを加盟国が独自の判断で制限するのはEU法に違反すると主張しているが、法務官はこれを否定した形。最終的に司法裁が法務官見解に沿った判決を下した場合、ウーバーや民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーをはじめとするシェアリングエコノミー型サービス全般に影響が及ぶ可能性もある。

ウーバーは5年前に欧州市場に進出し、営業免許を持たない一般のドライバーを活用した配車サービス「ウーバーポップ」の提供を開始した。スマートフォンのアプリを介してドライバーを手配し、低料金で客を送迎する同サービスは急速に浸透したが、ウーバーにシェアを奪われたタクシー業界の強い反発を受け、現在は正規の免許を持つドライバーを使った配車サービスに軸足を移している。

今回の事案は、フランスで2015年1月に施行されたタクシーおよびハイヤー業の規制に関する法律(通称テブヌー法)に基づき、パリの刑事裁判所が昨年6月、ウーバーと同社の幹部2人に対して罰金を科した判決を不服として、ウーバーの仏法人が訴えを起こしたもの。ウーバー側はEU域内で展開される情報社会サービス(デジタルサービスと同義)を加盟国が制限する場合、事前に欧州委の承認を得なければならないと指摘し、ウーバーポップの提供を不可能にしたフランスのタクシー規制はEU法に違反すると主張している。

シュプナル法務官はこれに対し、ウーバーは「通常の旅客輸送事業者」であり、加盟国は独自の判断で同社の活動を規制できると指摘。ウーバーポップを違法な輸送サービスとみなし、罰金刑を科した裁判所の判断に誤りはないとの考えを示した。

なお、同法務官は5月、スペインのタクシー運転手が加盟する団体が起こした裁判についても、ウーバーを旅客輸送事業者として扱い、タクシー事業者と同様の規制を適用して免許取得を義務づけるべきだとの見解を表明している。

上部へスクロール