欧州議会は4日の本会議で、EU域内で活動する多国籍企業に対し、利益や納税額などの情報を国別に報告・開示するよう義務付ける法案を賛成多数で可決した。国によって異なる税率や課税ルールを利用した税逃れを厳しく監視して税の透明性を高め、企業が利益を上げた国で確実に納税する仕組みを確立するのが狙い。閣僚理事会の承認を経て新ルールが導入される。
多国籍企業(域外に本拠地を置く企業を含む)に国別報告書の開示を義務付ける構想は、欧州委員会が昨年4月、2013年に発効したEU会計指令の改正案として提案した。新ルールが適用されるのは域内で活動する多国籍企業のうち、世界全体の売上高が年間7億5,000万ユーロを超える企業。欧州委はEU内に子会社や支社を置く域外の企業を含め、6,000社以上が該当するとみている。
対象企業は課税額や実際の納税額、売上高(関連会社間の売上高を含む)、税引き前損益、従業員数などをそれぞれ活動する国・地域の税務当局に報告すると同時に、ウェブサイトで情報を開示し、誰でもアクセスできるようにしなければならない。欧州委の原案は、域外の国・地域での活動についてはタックスヘイブンのみ国・地域ごとの報告を義務付ける一方、それ以外は全体の総額および総数の報告・開示で足りるとしていたが、欧州議会ではさらに一歩進め、タックスヘイブン以外についても国・地域ごとの報告・開示を義務付ける修正案が承認された。
一方、税務情報が公になることで企業の競争力が低下するといった懸念に対応するため、加盟国は「商業的に機密性の高い情報」の報告・開示義務を免除する例外措置を講じることができる。ただし、具体的にどのような情報が該当するかは言及されていない。加盟国は適用除外の詳細を欧州委に報告すると共に、1年ごとに見直しを行い、例外措置の適用が取り消された企業はただちに対象となっていた情報を報告・開示しなければならない。また、欧州委は例外措置の適用を受けた企業のリストを公表して1年ごとに更新する。