英政府は13日、同国のEU離脱に向けて、EU法を国内法に置き換える「廃止法」の法案を議会に提出した。離脱関連の法案で最重要のものだが、野党は反発しており、審議は難航が予想される。
英国はEU離脱に伴い、現在適用されているEUの法令が失効する。このため新たな法整備が必要となる。その手続きを規定するのが廃止法で、EUの前身である欧州共同体(EC)に加盟する際に制定された「1972年欧州共同体法」を廃止し、既存のEU関連の法令を国内法に置き換える。EUが「指令」の形で制定した法令は、すでに国内法に組み込まれているため対象外となる。その他の約1万2,000に上る法令が置き換えられる。
大きな焦点となっているのは、置き換えられた国内法について、EUを離脱してから2年間は、閣僚が必要に応じて議会で十分に審議することなく修正できる権限を持つという規定。野党は環境規制などが骨抜きにされる恐れがあるとして反発している。このほか、EU市民の人権を定めた「欧州基本権憲章」が英国で効力を失うことに関しても、政府は「欧州人権条約」が適用されるとして問題はないと主張しているが、市民団体などから反対の声が挙がっている。
同法案は離脱をスムーズに実現するために不可欠なもので、その成立は先の総選挙で惨敗したメイ首相が求心力を回復できるかどうかの試金石となる。議会での審議は今秋以降に開始される見込みだが、野党の抵抗が必至で、メイ首相は厳しい状況に直面しそうだ。