欧州委が文化財の違法取引防止法案を発表、テロ資金根絶へ

欧州委員会は13日、テロ組織の資金源根絶に向けた取り組みの一環として、歴史的文化財の違法取引を防止するための規則案を発表した。シリアやイラクなどで過激派組織「イスラム国」(IS)などが遺跡や博物館から貴重な文化財を略奪し、違法な取引で資金源を得ていることに対処するのが狙い。欧州議会とEU閣僚理事会で規則案について検討する。

規則案によると、取り締まりの対象となるのは古代遺跡の彫刻や工芸品、発掘調査で発見された埋蔵物など、250年以上の歴史を持つ文化財。このうち考古学的価値が高い文化財を取り扱うEU域内の輸入業者は、加盟国から厳格な審査に基づく免許の取得が義務づけられる。それ以外の文化財を輸入する場合は、内戦や戦闘の混乱に乗じて略奪されたものではなく、合法的に取引された文化財であることを税関で証明しなければならない。さらに税関当局に違法取引が疑われる文化財を差し押さえる権限を与え、水際での取り締まりを強化して略奪品の流通を防止する。

フランスなど一部の加盟国は文化財の違法取引を防ぐため、輸入業者に対して文化財がどこから輸出されたかなどの証明を義務づけているが、欧州委がEUレベルでの対策を打ち出したのは今回が初めて。欧州委のティマーマンス第一副委員長は「テロ組織は略奪した文化財を密売して巨額の活動資金を得ている。EU域内にこうした違法な文化財が流入するのを防ぐことでテロ資金源の根絶に貢献することができる」と取り締まり強化の意義を強調した。

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