欧州委がポーランドの議決権停止を示唆、政府の司法介入を問題視

欧州委員会は19日、ポーランドの政権与党「法と正義」が政府による司法への介入を可能にする法改正を目指していることを受け、改正手続きを凍結しなければEUでの議決権停止を含む厳しい制裁を検討すると警告した。欧州委は政府によるメディア統制も問題視しており、ポーランド出身のトゥスクEU大統領は20日、事態の打開に向け政権与党出身のドゥダ大統領に緊急の会談を申し入れたことを明らかにした。

ポーランドは共産主義体制の崩壊後、着実に民主化を進めてきたが、2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い法と正義が政権を掌握。違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、放送局や通信社を国営化するなど、司法の独立や報道の自由を脅かす強権的な政策を推し進めている。欧州委はこれまでも同党が主導する司法制度改革に対して強い懸念を表明し、「法の支配」の原則を守るよう繰り返し警告してきたが、新たに政府が裁判官の人事権を掌握する法案が上下両院で可決されたことを受け、EUでの議決権停止という、過去に適用されたケースがない厳しい制裁に踏み切る可能性を示唆した。

欧州委のティメルマンス第1副委員長(より良い規制・機関間関係・法の支配・基本権憲章担当)は、司法制度改革に向けた一連の政策が「法の支配に対する脅威を増幅させている」と批判。自由・民主主義・人権の尊重および法の支配に対する重大な違反を行った加盟国に対し、議決権を停止できることを定めたEU条約第7条を「発動する状況に近づいている」と警告した。ただ、議決権停止には全会一致(当該国を除く)の賛成が必要で、実際に採決が行われた場合、ポーランドと同様に強権姿勢を強めるハンガリーが制裁に反対する公算が大きい。

欧州委の警告に対し、法と正義のカチンスキ党首は「司法制度改革は純粋にポーランドの問題でありEUによる内政干渉だ」と反論。ポーランド外務省もEUの批判には「根拠がなく不当だ」との声明を発表した。

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