欧州取引所大手ユーロネクストは8日、ロンドン証券取引所グループ(LSE)の清算事業子会社LCHとの契約を更新すると発表した。英国のEU離脱に備え、ユーロネクストはロンドンに拠点を置くLCHから米インターコンチネンタル取引所(ICE)傘下のICEクリア(オランダ)に清算機関を変更する意向を示していたが、引き続きLCHがデリバティブ(金融派生商品)およびコモディティー取引の清算業務を担う。
ユーロネクストとLCHの新たな契約期間は2019年1月から10年間。今年第4四半期の手続き完了が見込まれる。一方、ユーロネクストは4月にICEクリアとの間で契約が成立した場合の条件を定めた基本合意書を取り交わしており、LCHとの契約更新に伴いICEに対する違約金支払い義務が発生する。
契約の一環として、ユーロネクストは保有するLCHグループ本体の株式2.3%を、LCH仏部門の株式11.1%と交換する。ユーロ建て金融取引の清算業務は現在、ロンドンに集中しているが、EU内では英国のEU離脱に向け、同国の清算機関に対してユーロ圏内に移転するか、EUの金融当局の監督下に入ることを義務づける方向で議論が進められている。パリに拠点を置くLCH仏部門に直接出資することで、将来的にユーロ建て取引の清算業務が拡大した場合に享受できるメリットを最大化するのがユーロネクストの狙いだ。一方、同社は契約更新を機に、「清算手数料を5~15%引き下げる」方向でLCHと協力すると表明している。
ユーロネクストは1月、LSEグループからLCH仏部門を5億1,000万ユーロで買収することで合意した。同取引はLSEとドイツ取引所の合併実現が条件だったが、欧州委員会は3月、両取引所の統合を認めた場合、債券決済市場で事実上の市場独占が形成され、公正な競争が阻害されるとして合併計画を却下。これに伴い、ユーロネクストによるLCH仏部門の買収も頓挫した経緯がある。