派遣労働者の規制強化、仏大統領が中東欧に支持要請

フランスのマクロン大統領は23~25日に中東欧諸国を歴訪し、EU域内の他の国に一時的に派遣される「海外派遣労働者」をめぐる規制改革への支持を訴えた。5カ国の首脳と相次いで会談したマクロン氏は、10月に開かれるEU首脳会議での合意を目指す方針を示しているが、派遣元となる自国企業の競争力低下を懸念するポーランドなどは規制強化に反対しており、加盟国間で対立が深まる可能性もある。

EUでは現在、派遣労働者が受け入れ国における同業種の労働者と同等の条件で働けるようにするため、1996年に制定された「海外労働者派遣指令」の改正が議論されている。現行指令は送り出し企業に対し、労働時間の上限や休憩時間、最低賃金、有給休暇などに関して現地の労働法制を適用するよう義務付けているが、ボーナスやその他の手当てについては規定がないうえ、税金と社会保険料は本国で納めることになっている。このため実際には中東欧からの派遣労働者が現地の労働者より安い賃金で働いており、ドイツやフランスなどの受け入れ国ではこれが地元の雇用を奪う一因になっているとの指摘がある。

マクロン氏はこうした現状を踏まえ、派遣元の企業に対して派遣労働者に現地採用者と同等の報酬の支払いを義務付けるほか、派遣契約の期間を最長1年に制限することを提案している。同氏は23日にオーストリアのザルツブルクで同国とチェコ、スロバキアの首脳と会談を行い、その後ルーマニアとブルガリアを訪問して派遣労働者や移民政策などについて協議した。

マクロン氏はザルツブルクでの会談後、4カ国首脳は加盟国が立場の違いを乗り越えてEUの改革を進めていく必要があるとの認識で一致したと強調。そのうえで「欧州単一市場と労働者の移動の自由が規制面で底辺の競争を生み出すことがあってはならない。この点で現行の海外労働者派遣指令は本質的に欧州の精神に背くものだ」と指摘し、規制強化の必要性を訴えた。

さらにマクロン氏は25日、最後の訪問先となったブルガリアで記者会見を行い、EU内で最も多くの労働者を送り出しているポーランドが規制強化に反対している点に言及。「ポーランドは多くの分野で欧州の利益や価値観に反する道を進んでいる。欧州は自由の上に成り立っているがポーランドはこれを妨げている」と厳しく批判した。

これに対し、ポーランドのシドゥウォ首相は右派系ニュースサイトとのインタビューで「マクロン大統領の傲慢さは恐らく政治経験の乏しさからくるものだということは理解できるが、彼がこうした欠点を補い、今後は節度ある態度を示すことを期待する」と述べた。

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