欧州委員会は14日、難民危機に対応するためシェンゲン協定の一部加盟国が一時的に復活させている国境審査について、最長2年まで継続可能とする現行ルールを見直し、さらに2年間の延長を認める方向で検討していることを明らかにした。難民の流入は減少傾向にあるものの、欧州各地でイスラム過激派によるテロが続いているため、安全保障の観点から長期にわたって国境審査を維持できるようにする。
人の自由移動を定めたシェンゲン協定の圏内では、2015年11月にパリで起きたテロ事件をきっかけに、フランス、ドイツ、オーストリア、デンマークと、EU非加盟国のノルウェーが相次いで国境での入国審査を復活させた。同協定の第26条は、治安などに深刻な脅威がある「例外的な状況」に限り、加盟国が原則6カ月の期限付きで国境審査を再導入し、改善がみられなければ最長2年まで継続することを認めている。EUでは半年または3カ月の期限付きでこれまでに4回、同措置を延長してきたが、10月末で期限を迎えるため、ドイツとフランスが欧州委にさらなる延長を認めるよう求めていた。
欧州委のアブラモプロス委員(移民・内務・市民権担当)はブリュッセルで開いたEU内務相会議後の会見で、「国境管理に関するシェンゲン協定の規定は安全保障面の課題に十分に対応できない可能性がある」と指摘。現在5カ国で実施している国境審査をさらに2年間延長できるようにするため、月内にも「現行ルールを更新する」と述べた。