フランスのマクロン大統領は22日、労働市場の改革に向けた5つの政令に署名した。これにより、労働条件や雇用に関する規制の緩和を目的とした改正労働法が近く施行される。実際に改正法の効力が生じるのは、実施細則を定めた政令の承認手続き完了後になるが、支持率が急速に低下するなか、年内にもマクロン氏が選挙公約に掲げた内政改革が本格始動することになる。
フランスでは失業率がおよそ10%と、英国やドイツの2倍に上り、特に25歳未満の失業率は20%を超えている。政府は8月末、労働規制を緩和することで企業の負担を軽減し、雇用を促すことを最大の目的とした改正労働法をまとめた。
改正法の柱の1つは、解雇された従業員が訴えを起こし、労働審判所が不当解雇と認定した場合に、企業が支払う賠償金に上限を設けること。また、これまでは業種ごとの労使交渉で決められていた労働条件について、今後は各企業の労使間で協議し、市場の状況に応じて柔軟に賃金や労働時間などを調整できるようにすることが盛り込まれている。
これに対し、労働組合は「従業員の解雇が容易になる」などと反発を強めており、今月に入り、各地で大規模な抗議デモを行っている。また、野党側はマクロン氏率いる「共和国前進」が議会下院の過半数を占めることから、政府が議会の承認なしに改正法を成立させる手続きをとった点を強く批判。23日には大統領選でマクロン氏と争った極左政党「左翼党」のジャンリュック・メランション氏の呼びかけで、パリで大規模な抗議集会が開かれ、労働法改正に反対する約3,000人の市民がデモ行進を行った。