違法コンテンツ対策で欧州委が新指針、実施状況に応じて法制化検討

欧州委員会は9月28日、ソーシャルメディアや検索エンジンなどのオンラインプラットフォームに対し、憎悪や暴力、テロ行為を煽るような違法コンテンツを排除する取り組みを促す新たな指針を発表した。フェイスブックなど米IT大手4社は昨年、欧州委との間でヘイトスピーチの拡散を防止するための行動規範に合意したが、ネット上にまん延する違法コンテンツを排除するにはより迅速で効果的な対応が不可欠。欧州委は今後数カ月にわたって指針の実施状況を監視し、必要に応じて法制化を含む追加措置を検討する。

欧州では難民危機やテロの脅威を背景に、ネット上で人種差別や外国人排斥を扇動するヘイトスピーチが横行している。ソーシャルメディアなどを利用したテロ組織によるプロパガンダへの対応も急務になっている。フェイスブック、ツイッター、マイクロソフト、グーグル傘下のユーチューブは昨年5月、EUとヘイトスピーチ対策で合意。ヘイトスピーチの削除要請を受けた場合、原則として24時間以内に投稿内容をチェックし、違法と判断したコンテンツを削除するか、閲覧できないようにすることなどを盛り込んだ行動規範に署名した。ただ、行動規範に法的拘束力はないため、違反企業に対する制裁を盛り込んだEUレベルの規制を求める声が高まっている。

今回の指針では違法コンテンツの検出と通知、効果的な削除、再投稿の防止に重点が置かれている。具体的にはオンラインプラットフォームに対し◇各国当局との連絡窓口になる担当者を任命して当局との連携を緊密にする◇違法コンテンツの自動検出技術や、ユーザーが簡単な手順で有害コンテンツを通報できるシステムを導入する◇自動化ツールの開発を急ぎ、削除した違法コンテンツがくり返し投稿されないようにする――などを求めている。さらに、現在は28%のケースで違法コンテンツの削除に1週間以上かかっている現状を踏まえ、「深刻な被害が予想される」場合には、期限を設けて各社に迅速な対応を求めることも検討すると説明している。

欧州委のアンシップ副委員長(デジタル単一市場担当)は声明で「オンライン上の違法コンテンツに対するEUの答えが今回の指針だ。オンラインプラットフォームは指針に沿って行動することで義務を果たしやすくなる」と指摘。ヨウロヴァ委員(法務・消費者・男女平等担当)は「オフラインと同様、オンラインでも法の支配が適用される。デジタル領域で無法地帯を容認することはできない」と強調した。

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