EU統計局ユーロスタットが9月29日発表した同月のユーロ圏のインフレ率(速報値)は前年同月比1.5%で、前月から横ばいだった。景気の回復は進んでいるが、なお欧州中央銀行(ECB)が目標とする「2%をわずかに下回る水準」を割り込んでいる。
インフレ率は予想の1.6%を下回る水準。分野別ではエネルギーが3.9%、工業製品が0.5%、サービスは1.5%だった。ECBが金融政策決定で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ)は1.1%となり、前月の1.2%から0.1ポイント縮小した。
ユーロ圏では景気の緩やかな回復が続いており、2017年4~6月期の域内総生産(GDP)は前期比で0.6%増加した。雇用も改善している。ただ、賃金の上昇は鈍く、ユーロ高で輸入コストが下がっていることもあって物価の上昇は力強さを欠いている。
それでもECBのドラギ総裁は9月初め、ユーロ圏の国債などを買い入れる量的金融緩和の見直しを10月26日に開く理事会で決める意向を表明。量的緩和を来年以降も継続するが、規模を段階的に縮小すると見られている。景気拡大が今後も続き、賃上げが進んで物価を押し上げるとの期待や、買い取り対象となる国債が減っていることが背景にある。物価上昇は鈍いものの、市場ではECBが予定通り量的緩和縮小に踏み切るとの見方が多いようだ。