英政府とEUが、世界貿易機関(WTO)の他の加盟国に割り当てている農産物の輸入枠について、英国のEU離脱後も現行水準で維持し、双方で分割することで基本合意したもようだ。4日付の英フィナシャル・タイムズ(FT)などが報じたもので、近くWTOに提案するという。
EUは域外から輸入する農産物に対して一定の枠を設け、関税率を抑えるか、関税を適用していない。英国はEU離脱に伴い、単独でWTOに加盟することから、この輸入割り当て枠を見直す必要がある。
EU筋がFTに明らかにしたところによると、欧州委員会と英政府はこのほど、EUと英を合わせた割り当て枠を今後も現在と同水準に据え置くことで合意。同枠は品目ごとに過去3年間のEUと英国での消費実績に基づいて分け合うことを決め、合意内容をEU各国に連名の書簡の形で通知した。
WTO加盟国では英国への農産物輸出が多い豪州、ニュージーランドなどが、英国のEU離脱を機に、英とEUを合わせた割り当て枠を増やすよう求めている。現行水準のままでは、EU離脱後の英国の輸入枠が減る可能性があるためだ。
一方、英国を含むEU各国は自国の農業を保護するため、域外からの安価な農産物の輸入をできる限り抑えたいという事情がある。今回の合意は、英国が離脱する前に同国と他の加盟国が結束し、他のWTO加盟国との交渉に臨むことで、割り当て枠の現状維持を確保したいという思惑がある。EUと英国が輸入実績を無視した割り当て枠の押し付け合いを演じるのを避ける狙いもあるもようだ。ニュージーランド産のラム肉など、英国の輸入量が他のEU加盟国と比べて多い品目は、EUの割り当て枠が減り、その分を英が引き受ける形となる。
EUと英国の離脱交渉では、通商など将来の関係をめぐる協議は後回しとなっている。ただ、農産物の輸入枠をめぐる問題は、第3国も絡んで調整に時間がかかることから、水面下で交渉を行い、基本合意に達した。