英中央銀行イングランド銀行のウッズ副総裁は1日、英国がEUを離脱する際、同国の金融業界では「離脱初日」に約1万人が職を失うとの見方を示した。英国は2019年3月にEUを離脱する見通しだが、離脱条件でEU側との溝が埋まらず、自由貿易協定(FTA)など通商協議に入るメドが立っていない。英産業界は将来に向けた合意がないまま離脱に追い込まれる事態への警戒を強めており、ウッズ氏は無秩序な人の移動や事業移転などを避けるためにも、離脱後の激変を緩和するための「移行期間」に関する早急な合意が必要と訴えている。
英国がEUから離脱すると域内で自由に営業できる「単一パスポート」を失う可能性が高いため、ロンドンに欧州本社を置く金融機関は離脱後も確実に単一パスポート制度の適用を受けるため、ユーロ圏に中核拠点を移す必要に迫られている。英政府は移行期間を設けることで企業がEU離脱による激変的な状況に直面する事態を回避したい考えだが、金融機関は離脱までに新たな事業免許を取得するため来年第1四半期に当局への申請手続きを開始しなければならず、そのためには12月の首脳会議で移行期間に関する合意を形成する必要がある。
ウッズ氏は英中銀の監督下にある健全性規制機構(PRA)を統括している。同氏は英上院財務委員会の公聴会で、英国のEU離脱に伴い「初日に英金融サービス部門の1%、あるいは銀行・保険業界の約2%に相当するおよそ1万人」の職が失われる可能性があると指摘。さらに、米大手コンサルティング会社のオリバー・ワイマンが昨年まとめた「英金融業界で最大7万5,000人が職を失う」との予測に関しても、「妥当なシナリオの範囲内」との見方を示した。