租税回避地ブラックリストを年内承認へ、制裁導入では合意できず

EUは7日開いた財務相理事会で、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れの防止策について協議し、租税回避対策に非協力的な国・地域を列挙したEU共通の「ブラックリスト」を早急に策定して年内の承認を目指す方針を確認した。多国籍企業や富裕層の課税逃れや不正蓄財を助長しているタックスヘイブンを特定し、EU全体で対策を強化する。

EUではこれまで加盟国が独自にタックスヘイブンのリストを作成し、対象となる税法域の監視を行ってきた。しかし、タックスヘイブンを使った富裕層らによる課税逃れの実態を浮き彫りにした「パナマ文書」の流出を受け、加盟国は2016年6月、EU共通のブラックリストを策定することで合意。欧州委員会が税の透明性、優遇税制、法人税免除やゼロ税率の適用などについて検証を行い、同年9月に租税回避を助長している可能性のある81カ国・地域を公表した。

その後、ブラックリストに掲載する国・地域の最終調整が難航し、「17年中」としていたリスト承認の目標は大きくずれ込んでいたが、今月初めに「パラダイス文書」と呼ばれる新たな内部文書が流出したことで、対策強化に向けた機運が高まった。

加盟国は今回、ブラックリストの掲載国・地域に対する制裁の導入についても協議した。フランスのルメール経済・財務相は、対象国・地域が租税回避を助長するような制度や法律の見直しに応じない場合、国際通貨基金(IMF)や世界銀行など国際機関による金融支援を縮小することを提案。EU当局者によると、財務相理では加盟国の多くが制裁の導入を支持したものの、ルクセンブルクやマルタなどが反対を表明し、折り合いがつかなかった。

欧州委のドムブロフスキス副委員長は記者会見で「ブラックリストに関して年末までに合意したい」と強調。ルメール氏の提案については言及を避けたが、租税回避対策に非協力的な国・地域への「対抗手段」は必要だとの考えを示した。

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