EU加盟国は9日、発がん性が疑われる除草剤成分「グリホサート」の認可期間を5年延長する案を採決したが、賛否が分かれて結論を持ち越した。EU市場では12月15日に認可期間が終了するため、欧州委員会は11月末までに改めて認可更新を加盟国に提案する方針を示している。
グリホサートは米農薬大手モンサントの除草剤「ラウンドアップ」の主成分。欧米では40年以上前から広く使用されているが、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2015年、発がん性の恐れがあるとする報告書を公表した。しかし、WHOと国連食糧農業機関(FAO)の合同専門委員会は同年、食物摂取を通じた曝露による発がんリスクは「恐らくない」との結論をまとめており、国際機関の間で安全性に関する評価が分かれている。
欧州委は当初、10年間の認可延長を提案していたが、グリホサートの安全性を懸念する欧州議会は先月、新たな認可期間を5年とし、22年以降は域内での使用を禁止する決議を採択した。これを受けて欧州委は5年の認可延長を勧告したが、加盟国の間で意見調整がつかず、先月末の会合では採決を見送っていた。
各国の専門家による採決では英国、オランダ、デンマークなど14カ国が認可延長を支持したのに対し、フランス、ベルギー、イタリアなど9カ国が反対票を投じ、5カ国が棄権。欧州委の提案は特定多数での承認を得ることができなかった。