欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/12/4

EU情報

欧州委が新たなVAT不正防止策発表、税務当局と捜査当局の連携強化など柱

この記事の要約

欧州委員会は11月30日、国境を越えた取引にかかる付加価値税(VAT)の課税逃れを防ぐための新たな対策を発表した。加盟国の税務当局と捜査当局が連携して国境を越えた取引に関する監視を強化し、情報を共有してVAT詐欺などの不 […]

欧州委員会は11月30日、国境を越えた取引にかかる付加価値税(VAT)の課税逃れを防ぐための新たな対策を発表した。加盟国の税務当局と捜査当局が連携して国境を越えた取引に関する監視を強化し、情報を共有してVAT詐欺などの不正防止に努める。今後、欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。

欧州委によると、EUではVAT税制の抜け穴を悪用した不正行為などにより、年間500億ユーロを超える税収が失われており、その一部がテロリストを含む犯罪組織の資金源になっているとみられている。現行制度では事業者間の国境を越えた取引におけるVAT課税が免除されており、仕向地原則に基づいて輸出販売にかかる税率は0%となっている。VAT関連の不正行為はこの仕組みを悪用したものが中心で、輸入業者が輸入品を販売した時点で消費者からVATを受け取り、税務当局に収める前に姿を消すといった手法が広く知られている。

欧州委は10月、事業者間の国境を越えた取引にVATを課すことを柱とするVAT制度の改革案を打ち出した。輸出国の税務当局が仕向け地の税率でVATを徴収し、それを物品やサービスの最終的な消費地国に移転するという内容だ。加盟国間で税収を移転する仕組みを確立することで、事業者がVATを徴収してから納税するまでの時間差を利用した詐欺などを防ぐことができると考えられる。

今回の提案は、現行制度の下で不正を排除するためのもので、税務当局間の協力強化に加え、情報共有のためのオンラインシステムの構築、欧州警察機構(ユーロポール)や欧州不正対策局(OLAF)、欧州検察局(EPPO)との連携などが盛り込まれている。さらに国境を越えた不正な自動車販売を防ぐため、欧州委は加盟国の税務当局が他のEU諸国の新車登録に関するデータベースにアクセスできるようにすることを提案している。