欧州委員会は18日、EU加盟国がより柔軟に付加価値税(VAT)の税率を設定できるようにするとともに、中小企業の税務コストを軽減するためのVAT制度の改正案を発表した。これは欧州委が昨年10月に打ち出した、事業者間の国境を越えた取引にVATを課すことを柱とする大規模な改革案を補完するもの。EUではVAT税制の抜け穴を悪用した詐欺などの不正行為で年間500億ユーロに上る税収が失われているとされるが、今回の提案によって現行制度の見直しは最終段階に入った。
現行のVAT指令は標準税率を15%以上と定め、加盟国に軽減税率(5%以上)と、特例としてゼロ税率を含む超軽減税率の設定を認めているが、適用できる品目が細かく規定されている。改正案によると、加盟国は加重平均したVAT税率が12%以上になることを条件に、標準税率(15%以上)以外に2種類の軽減税率(5%以上)、ゼロ税率、超軽減税率(0~5%の間)と、合わせて4種類の軽減税率を設定し、幅広い品目に適用できるようになる。そのため欧州委は軽減税率を適用できる物品やサービスのリストを廃止し、武器、アルコール飲料、たばこ、ギャンブルなど、常に標準税率を適用しなければならない品目のリストを作成する。
一方、現行制度の下で加盟国は事業規模の小さい企業を対象に、VAT課税を免除することが認められているが、その基準が国によって異なるうえに、国境をまたいで取引を行う企業は課税免除の対象から除外されている。欧州委によると、こうした企業は国内だけで活動している企業と比べてコンプライアンスコスト(税務申告や管理業務で発生する費用)が11%多くかかり、競争面で不利な立場に置かれている。
そこで欧州委は加盟国が定めた課税免除の基準を維持したまま、新たにEU共通ルールとして◇収益が年間200万ユーロ未満の企業を対象に、VAT登録や税務管理などの手続きを簡素化する◇国境をまたいで取引を行う企業のうち、年間売上高が10万ユーロ未満の企業に対するVAT課税を免除できるようにする――などの導入を提案している。