英離脱後のEU予算めぐる協議開始、意見分かれ早期合意は困難に

英国を除くEU27カ国は23日に開いた非公式首脳会議で、英離脱後のEU長期予算(対象期間2021~27年)への対応について初めて協議した。EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)によると、各国は安全保障など重要分野の予算を拡大することで合意。しかし、英離脱で空いた穴を埋めるため、加盟国の拠出を増やす案では意見が大きく分かれており、早期の合意は難しい情勢となっている。

2019年3月に英国がEUを離脱することにより、2021年以降はEU予算の財源が150億ユーロ程度減る。しかし欧州委員会のユンケル委員長は1月初め、EUでは安全保障やテロ、移民対策を強化する必要があり、予算の増強が求められると指摘。21年以降は加盟国の拠出を従来の域内総生産(GDP)比1%から1.1%に増やし、財源確保を図る考えを示した。

これに沿って欧州委は14日に発表した素案で、支出削減策として農業補助金を削減するほか◇域内の地域格差を是正するため開発が遅れている地域のインフラ整備などを支援する結束基金に基づく補助金交付の制限◇EUの基本的価値や法秩序に従わない国への補助金交付の制限――という方針を打ち出した。

一方、欧州委はこれらの削減を実施したとしても、必要な分野への予算配分を増やすため、財源を強化する必要があるとして、各国が徴収する法人税収と、排出権取引で得る収入をEUに移管する額の拡大を提案した。英離脱で空いた穴を残る27カ国の拠出拡大で埋める形となる。

ユンケル委員長によると、首脳会議では安全保障、テロ、移民対策の予算を拡大する点は一致した。ただ、加盟国の拠出を増やす案については、ドイツ、フランス、スペインを含む14~15カ国が応じる姿勢を示したものの、拠出が補助金受給を上回る純拠出国のオランダ、デンマーク、スウェーデンが反対を表明。残る国は態度を保留した。

削減策に盛り込まれた補助金交付の制限は、補助金に厳しい条件を付けることで、純拠出国にさらなる拠出拡大の同意を取りつけたいという意図がある。トゥスク大統領によると秩序に従わない国への補助金制限については、同問題でEUから批判を浴びることが多いポーランドが反対に回らないなど、予想以上に抵抗は少なかった。

これと比べて大きく割れたのは、中東などからの移民の受け入れの規模と補助金交付額を連動するという案。多くの移民を受け入れているドイツのメルケル首相が提唱したもので、移民を積極的に受け入れない国は補助金が減らされることになる。これに関して、フランスは支持したが、中東欧諸国やオーストリア、ルクセンブルクなどが反対に回った。

予算問題をめぐる協議は、欧州委は5月2日に正式な提案を発表してから本格化するが、各国の思惑が入り乱れて話し合いが長期化するのは避けられない情勢で、トゥスク大統領は会合後の記者会見で年内の合意は難しいとの考えを示した。

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