欧州対外国境管理協力機構(FRONTEX)が20日公表したリポートによると、2017年に不法に国境を越えてEU内に流入した中東やアフリカなどからの移民や難民は20万4,700人で、前年の51万1,000人から60%減少した。内戦が激化したシリアなどから180万人以上が押し寄せた15年の欧州難民危機と比べると1割程度まで減少したことになるが、大量流入が始まった14年以前と比べると依然として高い水準にあり、FRONTEXは各国当局が連携して国境管理や移民送還の体制を強化する必要があると警告している。
「2018年に向けたリスク分析」と題するリポートによると、難民危機の際にシリア難民らの主要経路となったトルコからエーゲ海を渡ってギリシャに入る「東地中海ルート」では、17年の不法越境者が前年比77%減の4万2,000人となり、15年(約88万人)との比較では5%以下まで減少した。EUは16年3月、トルコ政府との間で支援金とEU加盟交渉を加速させる見返りとして、ギリシャに密航した不法移民らをトルコに強制送還する協定を結んでおり、その効果が現れた格好だ。
またEUは昨年、北アフリカから地中海を密航して欧州を目指す難民・移民の抑制策として、リビアとも同様の協定を結んだ。その結果、リビアからイタリアに入る「中央地中海ルート」の不法移民も、17年は前年比34%減の11万9,000人となった。
これに対し、モロッコからスペインに渡る「西地中海ルート」は17年の不法越境者が2万3,000人と、前年の2.3倍に拡大した。
FRONTEXは「不法に国境を越えてEU域内に流入する移民や難民のおよそ3分の2をアフリカ出身者が占めている」と強調。今後は西地中海ルートからの流入を抑制するため、モロッコやアルジェリアとの協力強化を急ぐ必要があると指摘している。