米物流大手UPSは2月26日、オランダ同業TNTエクスプレスの買収を阻止したEUの欧州委員会に対して、17億4,200万ユーロの損害賠償を求める訴訟を起こしたことを明らかにした。
UPSは2012年3月、TNTを51億6,000万ユーロで買収することで合意した。これが実現すると、欧州の急送便市場でドイツポスト傘下のDHLを抜き最大手に浮上するはずだった。しかし、欧州委は13年、UPSとTNTが統合するとEUの小口宅配便市場の寡占が進み、健全な競争が阻害されるとして、買収を差し止めた。
UPSはこれを不服としてEU司法裁判所の一般裁判所に提訴。同裁判所は17年3月、欧州委が同買収の可否をめぐる審査で、過去の案件と異なる「計量経済額的なモデル」に基づいて競争上の分析を行い、UPSの権利を侵害したと認定し、欧州委の決定を無効とする判決を下していた。
TNTは後に米フェデックスに買収されたことから、UPSによる買収が復活することはない。UPSは欧州委の不当な決定で買収が実現せず、損害を被ったとして、EU司法裁の一般裁判所に提訴した。UPSは昨年12月に提訴したが、その事実は公表されていなかった。
欧州委は買収を無効とした判決を不服とし、EU司法裁に控訴している。今回の案件の司法判断は、控訴審の判決が出てから下されることになる。