欧州委員会は8日、英国の税関が中国製の衣類や靴を扱う輸入業者による関税逃れを黙認し、適切に徴税しなかったとして、英政府に27億ユーロの支払いを求める通知文書を送付したと発表した。英当局は欧州不正対策局(OLAF)からくり返し警告を受けていたにもかかわらず、不正取引を防止するための対策を取らず、深刻な税収の逸失をもたらしたと指摘している。英国は2カ月以内に回答しなければならず、対応が不十分な場合、欧州委はEU司法裁判所に提訴する可能性がある。
OLAFは昨年、英税関が不正取引の実態を把握しながら職務を怠り、適切な措置を講じなかったとの調査結果をまとめ、未徴収の関税を回復するよう欧州委に勧告していた。欧州委によると、輸入業者は関税の支払いを最小限に抑えるため、中国製の衣類や靴の取引価格を実際より低く申告して虚偽のインボイス(送り状)を提出していた。例えば女性用ズボンの場合、英国での申告額がEU平均の5%以下というケースもあった。OLAFは2007年の段階で英側に不正の可能性を警告していたが、税関当局はこうした「アンダーバリュー」と呼ばれる手法を黙認し、その後も輸入品の多くが英国から他のEU諸国に運ばれ、販売された。
英政府は声明を発表し、欧州委が算出した徴収漏れの関税について「認知していない」と反論。メイ首相の報道官は「欧州委員会からの通知文書を慎重に吟味し、期限までに回答する」とコメントした。