欧州委員会は14日、EU内の銀行が抱える不良債権の処理を促進するための包括的な対策を提案した。域内のすべての銀行を対象に、今後の新規融資で生じる不良債権の引当率について共通の最低基準を設け、引当金の積み増しを求めることを柱とする内容だ。
欧州委の提案は、引当金の積み増しのほか◇セカンダリー・マーケット(流通市場)での不良債権売却促進◇法人向け融資について、借り手がデフォルト(債務不履行)に陥った場合、銀行が融資時の合意に基づき、訴訟を起こすことなく抵当権を行使できるようにする仕組みの整備◇各国が資産管理会社(AMC)と呼ばれる不良債権の買い取り会社を設立するために必要となる規則などの整備――の計4項目。加盟国と欧州議会の承認を経て実施する。
最大の焦点となる引当金に関しては、引当率を無担保の不良債権で1年目に最低35%とし、2年目に100%とすることを義務付ける。担保がある債権の最低引当率は1年目が5%、2年目が10%、3年目が17.5%、4年目が27.5%、5年目が40%、6年目が55%、7年目が75%で、8年目に100%とすることを求める。これを順守できない場合は、足りない引当金を当該銀行の自己資金から補てんするというルールも提案した。
EUの銀行の不良債権は減少傾向にあり、2017年7~9月期の不良債権比率は前年同期を約1ポイント下回る4.4%と、14年10~12月期以来の低水準まで縮小した。それでも不良債権の総額は9,100億ユーロ程度に上り、依然として金融システムを圧迫している。
さらに不良債権問題は、EU銀行同盟創設構想の最終段階となる共通の預金保険保証制度(EDIS)導入の障害にもなっている。ドイツなどが不良債権処理の進展が前提と主張し、調整が難航しているためだ。
このため、加盟国は昨年7月の財務相理事会で、域内の銀行が巨額の不良債権を抱える問題への対応策を強化することで合意し、行動計画を採択した。今回の提案は、行動計画を具体化したものだ。