欧州委が「欧州労働監督機関」設置を提案、社会保障制度見直しも勧告

欧州委員会は13日、EU域内の他の国で就労する労働者の権利保護を強化するため、EUレベルで労働市場を監督する「欧州労働監督機関」の設置を提案した。また、非正規労働者や自営業者を含むすべての労働者が正規労働者と同等の社会保障を受けることができるよう、加盟国に対して現行制度の見直しを勧告した。3月に開く雇用・社会政策担当相理事会とEU首脳会議で欧州委の提案について協議する。

欧州委によると、域内の他の国で働くEU市民は2017年に約1,700万人と、10年前と比べて2倍に増えた。しかし国ごとに労働市場が規制されているため、EUルールの運用が国によって異なるケースがあり、例えば派遣労働者の扱いなどをめぐって不平等が生じている。欧州委はこうした問題に対処するため、新たにEUレベルの監督機関を設置し、全てのEU市民がEU法で保障された自由移動の権利を行使して、能力や条件に応じて域内の他の国で就労したり、起業しやすくする必要があると説明している。

欧州労働監督機関の役割としては、域内の他の国で就職したり、起業するために必要な情報(実習制度や権利・義務など)の提供、各国の監督機関に対するサポート、複数の国で活動する企業の再編などによって加盟国間でトラブルが生じた際の調停などが想定されている。欧州委は欧州議会と閣僚理事会の承認を経て、2019年の新機関設置を目指すとしている。

一方、社会保障制度の見直しに関する勧告は、パートタイムやアルバイトをはじめとする非正規労働者と自営業者が、正規雇用者と同等の社会保障を受けられるようにするためのもの。EUでは16年時点で非正規労働者と自営業者が全就労者の40%を占めており、ライフスタイルの変化などを背景に、今後もこの割合は拡大すると予想されている。しかし、多くの加盟国でこうした人々は十分な保障を受けられず、経済的・社会的に不安的な状態にさらされている。欧州委は労働市場の実態に合わせて社会保障制度も改革する必要があると指摘し、加盟国に具体策を検討するよう求めている。

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