食品世界最大手のネスレ(スイス)は7日、米コーヒーチェーン大手スターバックスと提携し、同社の商品を世界市場で販売する権利を取得したと発表した。ネスレはスターバックスに現金71億5,000万ドルを支払う。ネスレはスターバックスのブランド力を利用して、引き続き成長が見込める北米市場を中心にシェア拡大を図る。
発表によると、ネスレはスーパーマーケットなど、スターバックスの店舗以外で同社ブランドのコーヒー豆や容器入りコーヒー飲料、フードメニューを販売する権利を取得した。契約の一環として、同社は事業拡張に向けスターバックスの従業員約500人を引き受ける。競争当局の承認を得て、2018年末の手続き完了が見込まれる。
ネスレのマーク・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は「スターバックスとの取引は当社のコーヒー事業にとって極めて重要な一歩だ。今後は世界のコーヒー市場でスターバックス、ネスカフェ、ネスプレッソという3つの強力なブランドを展開することになる」と強調。スターバックスのケビン・ジョンソン社長兼CEOは「ネスレとの提携を通じて世界中の消費者にスターバックスの商品を届けることが可能になる。当社は常に消費者ニーズの変化に合わせてビジネスを展開しており、価値観を共有するネスレと協力できることを誇りに思う」とコメントした。
ネスレによると、スターバックスから販売権を取得した事業の年間売上高は約20億ドル。なお、スターバックスは今回の取引で得た利益を自社株買いの資金に充てる方針を示している。
ネスレは主力商品の「ネスカフェ」を約180カ国・地域で展開するコーヒービジネスの最大手。カプセル式コーヒー「ネスプレッソ」の売り上げも好調だが、利益率の改善を求める米投資ファンドなどからの圧力を背景に、昨年9月には高級コーヒー店をチェーン展開する米ブルーボトルコーヒーを買収した。
一方、スターバックスはコーヒー市場の細分化が進む中、主力の米国市場で客足が鈍っており、事業効率を改善する必要に迫られている。昨年7月には傘下の高級紅茶ブランド「ティバーナ」が米国で展開するチェーン店の閉鎖を発表。11月には同じく紅茶ブランド「タゾ」を食品・日用品大手の英蘭ユニリーバに売却することで合意している。