欧州委員会は7日、鉄鋼世界最大手のアルセロールミタル(ルクセンブルク)が伊鉄鋼大手イルバを買収する計画を条件付きで承認したと発表した。当初は欧州鉄鋼市場の競争が阻害されるとして難色を示していたが、アルセロールミタルが競争上の是正策を提案したことから、その実施を条件に認めることを決めた。
イルバは伊南部ターラントにある欧州最大級の製鉄所を運営する企業。同製鉄所から出る粉じんが周辺住民の健康被害を引き起こしたため、2012年に政府の管理下に置かれた。さらに競争激化で赤字が続いていることから、政府が15年に雇用維持のため国有化した。
アルセロールミタルは伊製鉄会社マルチェガリア、大手銀行インテサ・サンパオロとコンソーシアム(企業連合)を結成し、イルバの民営化入札に応札。昨年6月に落札し、同社を18億ユーロで買収することを決めた。
しかし、欧州委はイルバがアルセロールミタルの傘下に入ることで健全な競争が損なわれ、欧州で熱間圧延鋼、冷延鋼、亜鉛めっき鋼の価格が上昇する恐れがあるとして承認を渋っていた。
これに対してアルセロールミタルは、欧州委が懸念する分野の生産施設をベルギー、チェコ、イタリア、ルーマニア、ルクセンブルク、マケドニアで売却することを提案。亜鉛めっき鋼の生産を手掛けるマルチェガリアをコンソーシアムから外すことも決めた。欧州委は同措置によって競争上の懸念が解消されると判断し、買収を承認した。