欧州議会の経済・通貨委員会は16日、デリバティブ(金融派生商品)取引の清算業務をめぐり、ユーロ建て取引を扱うEU域外の清算機関への監督を強化する法案の修正案を賛成多数で可決した。欧州委員会は英国のEU離脱を念頭に、欧州委の権限でEU域内に設立されていることをユーロ建て取引に関わる清算機関の認可要件にできることなどを盛り込んだ法案を打ち出したが、強制的な移転はコスト増大を招くといった批判が根強く、経済・通貨委は欧州証券市場監督機構(ESMA)に移転コストの詳細分析を求めるなどの条項を法案に追加した。
域外の清算機関に対する監督強化は、英国の離脱に伴い、ユーロ建て取引の大半を扱う同国の清算機関がEU規制の対象外となることに対応するのが狙い。欧州委は金融システムの安定確保が法案の目的と説明しているが、英国ではユーロ建て取引の拠点を大陸欧州に移転させるのが狙いとの受け止めが広がっている。
欧州委が昨年6月にまとめた法案によると、ユーロ建て取引に関わるEU域外の清算機関のうち、欧州委が「金融システムにとって重要」とみなしたものは、域内の清算機関としての要件を満たすことや、欧州証券市場監督機構(ESMA)が求めるすべての情報を開示することが求められる。さらにこれらの要件を満たすだけでは潜在リスクを最小化することが難しいと判断した場合、欧州委の権限でEU内に設立されていることを認可の条件とすることができる。
EU内では非ユーロ圏の英国がユーロ建て金融取引の中核を担っていることに対する不満が根強く、英国のEU離脱を機に、清算業務の拠点をロンドンからユーロ圏に移転させるべきだとの強硬論もくすぶる。しかし、ユーロ建てデリバティブ取引の清算拠点を英国から強制的に移した場合、市場参加者が負担する証拠金は現在のおよそ2倍に膨らむといった試算があり、EU内でもコスト面を懸念する声が高まっている。
こうした現状を踏まえ、修正案には域外の清算機関が認可取得のためEU内に移転した場合のコストとメリットの分析や、移転がシステミックリスクの軽減につながるかどうかの検証をESMAに求める条項がつけ加えられた。さらにEU当局と清算機関が所在する域外国の金融監督機関の間で十分な協力体制が構築できない場合、域外の清算機関がユーロ建て取引を扱えないようにする「保険メカニズム」も盛り込まれている。