欧州委員会は17日、安全で環境に配慮した、効率的な輸送システムを実現するための取り組みをまとめた政策文書を発表した。欧州における人や物資の移動と輸送の近代化を目的としたイニシアチブの最終段階にあたるもので、完全自動運転車を2030年代に実用化し、同分野で欧州が主導権を握るための行動計画や、EU域内で販売される重量車(トラックやバスなど)の排ガス基準などが盛り込まれている。
人間による操作をまったく必要としない完全自動運転車の実用化に向けた行動計画によると、EUが4億5,000万ユーロを拠出して道路や通信インフラの開発を推進。20年代に都市部でも自動運転を可能にし、30年代には完全自動運転が標準仕様となることを目指す。そのため欧州委は年内をめどに、安全基準や事故が発生した際の責任などについて、EU共通のルール作りに着手する。欧州委は完全自動運転車の実用化で25年までに関連産業の市場規模が8,000億ユーロを超えると試算している。
重量車を対象とする排ガス基準の策定は、二酸化炭素(CO2)排出量と燃費のモニタリングおよび報告を義務付ける規則の導入に続く第2段階の規制。EUでは域内で販売される乗用車と軽商用車について、20年を達成期限とするCO2排出目標を定めて規制を実施しており、さらに30年までにCO2排出量を21年比で3割削減することをメーカーに求めている。これに対し、重量車は用途によって形状やサイズなどが異なるため画一的なルールを適用することができず、これまで法制化が見送られてきた。
政策文書によると、新規制は域内で販売されるトラック(新車)のCO2排出量を25年に19年比で平均15%削減することをメーカーに義務付け、30年には同30%の削減を求めるという内容。さらにCO2排出削減を推進するため、トラックの車体に空気力学に基づく形状デザインを認めることや、低燃費タイヤなどのラベリング制度の見直しも盛り込まれている。