EUは17日、ブルガリアの首都ソフィアで西バルカン地域6カ国と首脳会議を開き、地政学的な要衝である同地域の安定を図るため、連携を強化する方針を確認した。双方はEU加盟の早期実現に向け、汚職撲滅や法の支配の徹底、移民問題での連携強化などで合意。欧州委員会は西バルカン地域内、および同地域とEUの間で輸送、エネルギー、デジタル分野のネットワーク構築を推進するための投資計画を打ち出した。
欧州委は今年2月、西バルカン地域6カ国のEU加盟に向けた新戦略を発表し、加盟交渉で先行するセルビアとモンテネグロに関しては、2025年の加盟を目標とする方針を打ち出した。アルバニア、マケドニア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナの4カ国についても加盟を後押しするため、経済的な支援などを約束している。バルカン半島では近年、ロシアや中国が存在感を強めており、英国のEU離脱で加盟国の結束が揺らぐなか、バルカン諸国の取り込みを急いで安全保障体制を強化する狙いがある。
EUのトゥスク大統領は会議後の記者会見で「西バルカン諸国にとってEU以外の未来はない」と強調。そのうえで、EU加盟を実現するには法の支配や人権の尊重、汚職撲滅、旧ユーゴ紛争で悪化した国や民族間の関係改善など、多くの課題を克服する必要があると指摘。EU内でも自国に分離独立運動を抱えるスペインやギリシャなど5カ国が、コソボの独立を承認していない点などを踏まえ、加盟への「近道」はないとくぎを刺した。
欧州委の投資計画によると、EUは西バルカン諸国における輸送ネットワークの向上を支援するため、高速道路建設や鉄道網の整備など、合わせて11のプロジェクトに総額1億9,000万ユーロを投じる。また、同地域のデジタル化を推進するため、3,000万ユーロを投じてブロードバンド網の構築を支援するほか、EU諸国と西バルカン諸国の間で携帯電話のローミング料金を引き下げる方向で具体策の検討に入る。さらに水力発電を中心に、再生可能エネルギーの導入促進を支援する。