欧州委員会は5月29日、EUの次期長期予算(対象期間2021~27年)の結束基金の補助金配分について、難民を多く受け入れている国を優遇することを提案した。これによって交付額はイタリアなど南欧諸国で増える一方で、中東欧諸国は減ることになる。
結束基金の補助金は経済発展が遅れている国を支援するもの。欧州委は5月2日に発表した次期EU長期予算の原案で、同基金への支出を現行長期予算と比べて7%減の3,730億ユーロ(物価調整後ベース)に削減する方針を打ち出していた。英国のEU離脱で財源が不足することが背景にある。
結束基金の交付額は、これまで各国の1人当たりGDPを主な基準として算出してきた。このため、ポーランドなど中東欧諸国が手厚い支援を受けていた。しかし、今回の提案には、難民受け入れの規模や若者の失業率も勘案することが盛り込まれたため、中東の難民が押し寄せるイタリア、スペイン、ギリシャへの交付が増えることになる。
これに基づく交付額はイタリアが434億ユーロ、スペインが383億ユーロ、ギリシャが216億ユーロで、それぞれ現行予算の351億ユーロ、312億ユーロ、173億ユーロを上回る。一方、難民受け入れに消極的な中東欧諸国はポーランドが821億ユーロから727億ユーロ、ハンガリーが230億ユーロから202億ユーロに減るなど、大きく圧縮される。
欧州委のクレツ委員(地域政策担当)は、中東欧諸国への補助金削減について、これらの国が経済的に豊かになってきたため、支援を減らすのは当然とコメント。これに対して中東欧諸国はポーランド政府が「応じられない」とする声明を発表するなどして猛反発しており、調整が難航しそうだ。