EU司法裁判所は25日、遺伝情報を効率よく改変できるゲノム編集の技術で開発された作物にも、従来の遺伝子組み換え作物(GMO)と同じ規制を適用すべきだとの判断を示した。バイオ業界ではEUのGMO規制とは別の、より柔軟なルールを求める声が根強いが、司法裁の判断は今後、国際的な枠組みづくりに影響を及ぼす可能性もある。
ゲノム編集は酵素の働きを利用して標的とする遺伝情報を変更する技術。従来の遺伝子組み換え技術に比べて操作の成功率が極めて高く、少ない予算と時間での品種改良や過酷な環境下での栽培などが可能になる。しかし、ゲノム編集作物に関する明確なルールは策定されておらず、フランスの農業団体が厳格なGMO規制の適用を求めて司法裁に訴えを起こした。
バイオ企業などの間では、ゲノム編集による改変は突然変異と同じといった主張もあるが、司法裁は「GMOと同様、自然に生じるものではない」と指摘。ゲノム編集作物をGMOと同等と位置付け、GMO規制を適用すべきだと結論づけた。
EUのGMO規制は世界で最も厳しいルールとして知られる。認可済みのGMOを使ったすべての食品に表示が義務付けられており、生産から消費に至る流通の全過程で追跡可能とする必要がある。GMOの栽培に関しては、EUが認可した場合でも加盟国が独自の判断で禁止できる権限を持ち、実際に栽培されているのはスペイン、ポルトガル、チェコ、スロバキア、ルーマニアなど一部にとどまっている。