イタリアの橋崩落事故、伊政府と欧州委の対立が表面化

イタリア北部ジェノバで高速道路の高架橋が崩落した事故を巡り、EUの財政規律に問題があると主張するイタリア政府と欧州委員会の溝が深まっている。今回の事故を受け、政府は全国規模でインフラの保守点検や改修を進める方針だが、政権内からは財政収支の改善に向けて緊縮財政を求める欧州委を批判する声も上がっている。

14日に崩落した橋は1960年代に建設されたもので、構造上の欠陥や老朽化が事故の原因とみられている。橋は2,000万ユーロを投じて補修工事が行われる予定だった。30台以上の乗用車とトラック数台が巻き込まれた事故による犠牲者は18日時点で41人に上り、さらに増える恐れがある。

極右政党「同盟」を率いるサルビーニ内相は15日、ツイッターに「EUの財政規律を守ることが国民の安全よりも重要なのか。自分はそうは思わない」と投稿。河川や学校、高速道路、病院などの安全性を確保するため、必要があれば財政規律に基づく制限を受けることなく、インフラ整備・改修のための支出が認められるべきだと主張した。サルビーニ氏はEU懐疑派の急先鋒で、これまでも財政規律の順守を求める欧州委に批判的だった。

これに対し、欧州委のシュパー報道官は、イタリアは2014-20年にEUのインフラ基金から25億ユーロの資金提供を受けているほか、欧州委は今年4月に総額85億ユーロを投じて老朽化した道路や橋の整備・改修を進める計画を承認したと指摘。「EUの財政ルールは加盟国に予算の優先配分を決定する権限を与えている」と述べ、EUの財政規律によってイタリア政府が必要な行動を取れなくなっているとの主張を否定した。

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