発がん物質混入の血圧降下剤原料、医薬品庁が健康リスクを再調査

欧州医薬品庁(EMA)はこのほど、中国で製造された高血圧治療薬の原薬に発がん性物質が混入しているとして、世界各国で自主回収が相次いでいる問題で、健康被害のリスクを検証するための再調査を行っていると発表した。ただちに重篤な健康被害を引き起こす恐れはないものの、長期にわたって服用を続けた場合、5,000人に1人の割合でがんを発症する可能性があるとの暫定的な分析結果をまとめ、注意を呼びかけている。

EMAは7月5日、中国の浙江華海薬業が製造したバルサルタンに発がん性があるとされるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が混入しているとの研究報告をまとめ、同原薬を用いた製剤を自主的に回収するよう警告。ドイツやイタリアを含む欧州諸国のほか、日本、韓国、台湾などで血圧降下剤の自主回収が相次いだ。米食品医薬品局(FDA)も13日、同様の警告を発している。

世界保健機関(WHO)の一機関である国際がん研究機関(IARC)は、NDMAをグループ2A(ヒトに対して恐らく発がん性がある物質)に分類している。EMAの初期調査によると、浙江華海薬業は2012年にバルサルタンの製造工程を変更しており、その際に不純物が混入してNDMAが生成されたとみられている。

EMAは今回、動物実験に基づく新たな分析結果をまとめ、1日当たりバルサルタン320mgを7年間服用し続けた場合、5,000人に1人の割合でがんを発症する可能性があると警告した。ただちに健康被害が生じる恐れはないものの、服用する場合は必ず医師に相談するよう呼びかけている。

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