EUは12日、ブリュッセルで財務相理事会を開き、税制政策の決定に必要な全会一致の原則を見直し、段階的に特定多数決制に移行する案について協議した。フランスやドイツなどが特定多数決制の導入を支持したのに対し、ルクセンブルクなど5カ国が全会一致制の維持を主張し、意見の隔たりは埋まらなかった。
EUでは外交や安全保障と同様、税制政策も通常の立法手続きで全会一致の原則が採用されているため、加盟国の意見調整に時間がかかり、域内の税制調和を図るうえで大きな障害となっている。欧州委員会は多国籍企業による税逃れ対策など早急な対応が求められている現状を踏まえ、今年1月に全会一致制から特定多数決制への段階的な移行を提案した。
ロイター通信によると、財務相理ではルクセンブルクのほかオランダ、スウェーデン、マルタ、リトアニアが欧州委の提案に反対した。ルクセンブルクのグラメーニャ財務相は報道陣に対し、税制政策の意思決定では加盟国による全会一致が「極めて重要だ」と強調した。
一方、欧州委のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は財務相理の協議が不調に終わったことを受け、「一部の加盟国による妨害行動は民主主義的で、より効率的な特定多数決による意思決定を軽視する無意味な行為だ」とコメントした。