欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会の3機関は13日、EU著作権指令の改正案で基本合意した。規制強化に反対する大手IT企業のロビー活動などで協議は難航していたが、ようやく合意にこぎつけたことで5月末の欧州議会選挙までに改正指令案が成立するめどがたった。3月にも欧州議会の本会議で採決が行われる見通し。採択された場合、加盟国は2年以内に新指令に沿って国内法を整備することになる。
欧州委は2016年7月、デジタル時代に対応した著作権制度の確立を目指してインターネット上の著作権保護を強化する「デジタル単一市場(DSM)における著作権指令(案)」を発表した。改正案の柱の1つは、報道機関などが配信したニュースを検索サイトなどに掲載した場合、サイト運営者に使用料の支払いを義務付ける仕組みの導入(第11条)。「リンク税」と呼ばれるもので、ニュース記事の全文を掲載する場合だけでなく、記事の見出しやスニペット(短い抜粋)をまとめて表示するサービスも課金の対象となる。
リンク税は新聞や雑誌などの報道出版物を対象としたもので、学術専門誌は含まれない。米グーグルが提供する「グーグル・ニュース」などを標的としていることから、「グーグル税」とも呼ばれる。著作物の利用をめぐり、報道機関や媒体社が正当な対価を得られる仕組みを整えるのが狙いだ。
もう1つの柱は、グーグル傘下の「ユーチューブ」をはじめとするインターネットプラットフォームを運営する事業者(プラットフォーマー)に対し、「コンテンツフィルター」を導入してユーザーが投稿する動画などが著作権を侵害していないかどうかを事前にチェックし、適切に対処することを義務付けるという内容(第13条)。違法コンテンツが投稿された場合、現行ルールでは権利者が著作権侵害の申し立てを行い、これを受けてプラットフォーム側が当該コンテンツを削除する仕組みになっているが、新ルールが導入されるとプラットフォーマーは違法コンテンツを能動的に排除しなければならず、対応が不十分な場合は不法行為責任を問われる可能性がある。
第13条をめぐっては、反対派の間で「インターネットの自由が脅かされる」といった批判が根強く、欧州議会では小規模プラットフォーマーを対象から除外する修正を加えてようやく可決にこぎつけたものの、適用除外の範囲をめぐって加盟国の意見調整が難航。最終的に◇設立から3年未満◇年間売上高が1,000万ユーロ未満◇月間ユーザー数が500万人未満――という3つの条件にあてはまるプラットフォーマーについてはコンテンツフィルターの導入義務を免除することで合意が成立した。