EUがデジタル税導入断念、加盟国間の溝埋まらず

EU加盟国は12日に開いた財務相理事会で、米グーグルやアップルなどの大手IT企業を対象とする独自の「デジタルサービス税」の導入案について協議した。しかし、加盟国の意見が分かれて決着せず、目標としていた19年3月までの合意を断念することになった。

デジタル税導入は、欧州委員会が18年3月に提案したもの。現行の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みとなっており、EU内で国によって異なる課税ルールを利用したネット企業などによる課税逃れが問題になっていることが背景にある。

税制改革には、全ての加盟国による全会一致の承認が必要となる。フランスやイタリアなどがデジタル税の導入を支持する一方、低税率を武器にIT企業を誘致してきたアイルランドやルクセンブルク、米国の報復措置を恐れる北欧諸国などは導入に難色を示しており、調整が難航していた。

こうした状況を受けて、昨年末の財務相理事会ではフランスがドイツと連携し、課税の対象をインターネットでの広告収入に絞り込み、導入開始を2021年1月まで先送りするといった妥協案を提示。同妥協案に基づいて協議を続け、19年3月までの合意を目指すという方針を確認した。

それでも、アイルランドなどの反対が根強く、今回の理事会で合意に至らなかった。EUは今後、経済協力開発機構(OECD)が検討しているデジタル税制見直しに沿って、デジタルサービス税導入の実現を目指す方針だ。

EUではフランスが独自の「デジタル税」導入を打ち出し、4月に関連法案を提出する予定。イタリア、スペインなども追随する構えを示している。EU規模のデジタル課税が暗礁に乗り上げたことで、加盟国の足並みが乱れることになる。

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