イタリア政府は5月31日、EUの財政規律に違反した加盟国に適用される「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」を回避するため、欧州委員会に税収を含む歳入と歳出の見直しを行う方針を伝えた。欧州委は29日に伊政府に書簡を送り、債務抑制の取り組みに関して「十分な進展がみられない」と指摘。31日までに詳しく事情を説明するよう求めていた。
トリア経済・財務相は欧州委に宛てた書簡で、2020年の予算編成に先立ち「政府は歳出を見直し、歳入を確保するための包括的プランを策定中」と説明。債務圧縮に向けた基礎的財政収支の黒字化が不可欠との認識を示したうえで、失業率が依然として高く、景気が減速するなかで急激な財政緊縮を断行すれば「経済に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘。「政策実行のタイミングと規模が重要だ」と強調した。
欧州委は5月はじめに公表した四半期経済見通しで、イタリアでは経済成長が低迷する中、すでに膨れ上がっている債務が一段と拡大する恐れがあるとの見方を示した。同国では19年第1四半期のGDP成長率が0.2%と、2四半期連続のマイナス成長から3期ぶりにプラス成長に回復したものの、欧州委は19年の成長率が昨年の0.9%から0.1%に減速すると予想。2月に示した0.2%の予想から下方修正した。イタリアの累積債務はユーロ圏でギリシャに次ぐ高水準。18年はGDP比で132.2%に達し、EUの財政規律で上限となっている60%を大きく超えている。欧州委は政策に変更がなければ債務の対GDP比が19年に133.7%、20年は135.2%に拡大すると予想していた。
欧州委はトリア経済・財務相に宛てた29日付の書簡で、「EUの財政規律に基づく債務基準の順守に向けたイタリアの取り組みには十分な進展がみられない」と指摘。18年に債務縮小が進まなかったあらゆる要因を分析し、今後の対応策をまとめ、31日までに報告するよう求めた。イタリア側が期限までに回答しなかった場合、欧州委は今月5日に公表される見通しの財政規律の順守状況に関する報告書で、EU閣僚理事会に制裁手続きの着手を勧告する公算が大きく、同国は最終的に35億ユーロの制裁金を科される可能性があった。