EUのフォンデアライエン次期欧州委員長は10日、新欧州委員の人事案を発表した。男女のバランスを重視し、委員長を合わせた27人の委員のうち、自身を含む13人が女性となる。重要ポストでは、EUを離脱する英国との通商交渉を担う通商担当委員にアイルランドのホーガン氏(現農業・農村開発担当)を起用した。
欧州委員会はEUの内閣に相当する行政執行機関。委員長以下、加盟国が1人ずつ指名する欧州委員で構成される。これまでは28人だったが、英国が離脱するため27人に減る。
フォンデアライエン次期委員長は9日、各国が提示した候補者を承認。10日に各候補者の担当分野を発表した。(表参照)
副委員長は8人だが、うち3人を新たに設けた執行副委員長職に就け、それぞれが担当する分野のほか、委員長が重視する気候変動、デジタルなど重要3分野を担当させる。また、フォンデアライエン次期委員長は欧州委に新たに防衛・宇宙総局を創設することを決め、仏マクロン大統領の側近で、域内市場担当委員に指名したシルビー・グラール氏を総局長に起用する。
重要ポストで注目されていたのは通商担当委員。EU離脱後の英国との自由貿易協定締結など新たな通商関係を築くほか、保護主義を強める米国との交渉も担う要職だ。次期委員長はEUの中で唯一、英国と陸で国境を接し、離脱で大きな影響を受けるアイルランドの出身者を指名した。
競争政策担当委員には現職のベステアー氏(デンマーク)を続投させる。同氏は執行副委員長としてデジタル政策も担う。経済政策担当委員には伊元首相のジェンティローニ氏を充てた。EUの財政規律をめぐって欧州委と対立するイタリアに配慮した人事といえそうだ。
EUは外相に相当する外交安全保障上級代表にスペインのボレル現外相が就任することを決定済み。ボレル氏は副委員長も兼任する。
新欧州委は欧州議会の承認を経て、11月1日に発足する。任期は2024年10月末までの5年間。