EU司法裁判所は24日、ネット上で公開された自身に関する情報を検索結果から削除するよう個人が要求できる「忘れられる権利」について、適用範囲はEU域内に限られるとの判断を示した。検索エンジンの運営会社はユーザーから削除要請があった場合、EU域外での検索結果から個人情報へのリンクを削除する必要はないことになる。
忘れられる権利は、米グーグルに対して自身に関する過去の報道の削除を求めたスペイン人男性の訴えをめぐり、EU司法裁が2014年に下した判決で認めた権利。EU域内のユーザーはプライバシー保護のため、自身に関する情報へのリンクを削除するようグーグルなどの検索エンジンに要求できるようになった。同判決を受けて改正された「EUデータ保護規則」で初めて忘れられる権利が明文化され、18年5月に施行された「一般データ保護規則(GDPR)」にも盛り込まれている。
今回の判決は、忘れられる権利の適用範囲をめぐる仏データ保護当局とグーグルの訴訟に対するもの。グーグルは14年の判決を受け、ユーザーからの削除要請が妥当と判断した場合、EU域内ではリンクを削除して検索結果が表示されないようにしている。しかし、域外での検索には対応していないため、例えば英国やフランスでは削除済みであっても、米国版グーグルで検索すると当該情報へのリンクが表示される可能性がある。
これに対し、仏データ保護当局の情報処理・自由全国委員会(CNIL)は15年、EU域外での検索結果についても忘れられる権利に基づいて個人データの削除要請に応じるようグーグルに命令。同社が応じなかったため、10万ユーロの罰金支払いを命じた。グーグルは命令を不服として訴えを起こし、国務院が司法裁に判断を求めていた。
司法裁は判決で「個人情報やプライバシーに関する権利と、検索情報がもたらす正当な公共の利益といった他の権利のバランスをとる必要がある」と指摘。「EU法の下で、検索エンジンの運営会社がEU域外に忘れられる権利を広げ、全てのバージョンでリンクを削除する義務はない」と結論づけた。そのうえで、EU域内の適用だけで忘れられる権利の実効性を確保するのは難しいとの認識を示し、検索エンジンは欧州のネットユーザーが域外のサービスを通じて域内で削除された情報に到達することがないよう、有効な対策を講じる必要があると指摘した。