欧州委員会は22日、イタリア政府に対して、2020年予算案がEUの財政規律に違反する可能性があると指摘した。欧州委は昨年にもイタリアと予算案をめぐり対立し、財政改善を求めたが、今回は説明を求めるにとどめた。
伊政府が先ごろ決めた2020年予算案の財政赤字は、国内総生産(GDP)の2.2%に相当する規模。EUの財政規律で上限となっているGDP比3%を超えないものの、前政権が4月に打ち出した2.1%を上回る。
EUはギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、ユーロ参加国の財政監視強化策として、13年から各国の予算案を欧州委が事前に審査する制度を導入している。
欧州委はグアルティエーリ経済財務相に宛てた書簡で、特に構造赤字について、EU
がGDP比0.6%に相当する改善を求めているにもかかわらず、逆に同0.1%の悪化となることを問題視。イタリアがユーロ圏でギリシャに次ぐ巨額の累積債務を抱えているが、債務削減が基準点に届いておらず、財政規律に違反する恐れがあるとして、説明を求めた。
これに対してグアルティエーリ経済財務相は24日、20年予算案は「財政規律を大きく逸脱していない」と回答し、容認を求めた。
イタリアは19年の予算案をめぐり、18年6月に発足したポピュリズム(大衆迎合主義)政党「同盟」と左派「五つ星運動」の連立政権が財政赤字を従来の目標を大きく超える水準に設定したことから、欧州委と激しく対立し、最終的に譲歩して過剰赤字是正手続きの発動を免れた経緯がある。
欧州委は20年予算案にも問題はあるものの、9月に発足した新連立政権がEUとの協調路線を掲げていることから、厳しい対応を控え、説明を求めるにとどめたとみられている。