EUがマネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化に向けて動き出した。ロイター通信が入手した文書によると、加盟国は欧州委員会に対し、金融機関を通じた資金洗浄をEUレベルで監視する新たな監督機関の設置や、規制強化に向けた具体策を検討するよう求めている。12月の財務相理事会で規制強化に向けた提言が採択される見通しだ。
テロ組織への資金供給ルートに利用されやすい資金洗浄を取り締まるため、EUでは「マネーロンダリング指令」の改正を重ねてきた。しかし、国によって犯罪行為の認定や処罰の基準にばらつきがあるためEU全体で有効な対策を取ることができず、資金洗浄の横行を許してきたのが実情。2018年6月には第5次マネーロンダリング指令が施行されたが、その後もデンマークのダンスケ銀行が関与した2,300億ドル規模の資金洗浄疑惑が発覚したほか、オランダのINGグループが適切な顧客管理を怠った結果、同行の口座が資金洗浄や不正送金に利用されたとして、7億7,500万ユーロの和解金を支払うことでオランダ検察当局と合意している。
ロイターが入手した提言書の草案は、今月10日の財務相理事会で協議した内容をもとに、議長国フィンランドがまとめたもの。加盟国は欧州委に対し、現行のマネーロンダリング指令の問題点を洗い出し、不備を補う新たな規制を検討するよう要請。金融システムへの不正資金の流入をEUレベルで監視する監督機関の設置や、関連する当局間で効率的な情報共有を実現するためのメカニズムの構築なども検討するよう求めている。
欧州の有力銀行が関与した資金洗浄疑惑が相次いで発覚するなか、欧州中央銀行(ECB)と欧州議会は以前から、EU全体で不正を監視する新たな機関を設けて監督体制を強化する必要があると主張していた。しかし、これまでは多くの加盟国が機密性の高い情報の共有を強いられることに難色を示し、EU共通の監督機関の設置に反対していた。