欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/11/25

EU情報

英労働党がマニフェスト発表、EU離脱巡る2度目の国民投票を公約

この記事の要約

最大の争点となるEU離脱問題では、EUと新たな離脱条件をまとめたうえで、2度目の国民投票を実施する方針を正式に表明した。

政権交代が実現した場合、離脱問題ではEUとの間で新たな離脱条件をまとめたうえで、6カ月以内に再び国民投票を実施すると表明した。

公約に伴う追加の財政支出は829億ポンドと試算しており、富裕層を対象とした増税や法人税の引き上げを実施する方針を示している。

英最大野党の労働党は21日、12月12日の総選挙に向けたマニフェスト(政権公約)を公表した。最大の争点となるEU離脱問題では、EUと新たな離脱条件をまとめたうえで、2度目の国民投票を実施する方針を正式に表明した。このほかインフラ部門の国有化や企業や富裕層への増税などが公約に盛り込まれている。

労働党のコービン党首はバーミンガムで演説し、「この公約は英国に本当の改革をもたらす希望のマニフェストだ」と強調。保守党が続けてきた緊縮財政が公共サービスの質の低下を招いたと批判し、「労働党は常に国民の味方だ」と訴えた。

政権交代が実現した場合、離脱問題ではEUとの間で新たな離脱条件をまとめたうえで、6カ月以内に再び国民投票を実施すると表明した。離脱条件をめぐる交渉では関税同盟や単一市場に残留する形を目指すとしているが、党内は依然として在留派と離脱派に分裂しており、党として離脱の是非を明確に示すことはできなかった。

公約にはこのほか鉄道や郵便、水道事業を国有化し、利用料金を引き下げることや、気候変動対策への投資拡大などが盛り込まれている。また、英通信大手BTグループを一部国有化し、英全土で高速ブロードバンド網を無料で利用できるようにする方針を打ち出した。さらに国民医療制度(NHS)への歳出拡大や、公営住宅を年間15万戸新設する計画も盛り込んだ。公約に伴う追加の財政支出は829億ポンドと試算しており、富裕層を対象とした増税や法人税の引き上げを実施する方針を示している。

最近の世論調査によると、労働党の支持率は30%前後で推移しており、与党・保守党を10ポイント以上下回っている。ジョンソン首相や有力シンクタンクなどは労働党が離脱の是非を明確にしなかった点を厳しく批判しており、離脱政策で巻き返しを図るのは困難な情勢。このため選挙戦では環境問題に関心の高い若者を中心に、多様な層の取り込みを図るものとみられる。