欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/12/9

EU情報

米が仏デジタル税めぐり制裁発動へ、シャンパンなど対象に

この記事の要約

米通商代表部(USTR)は2日、フランスが導入した「デジタルサービス税」について、米国のIT企業を不当に差別しているとする調査報告書を発表した。

両国政府は8月、同問題での対立を避けるため、フランスが課税分の一部を対象企業に返還するという妥協案で合意したが、米トランプ大統領が受け入れず、外国の不公正な通商慣行に制裁を発動できる通商法301条に基づく制裁を警告していた。

仏政府とEUは米の制裁について反発している。

米通商代表部(USTR)は2日、フランスが導入した「デジタルサービス税」について、米国のIT企業を不当に差別しているとする調査報告書を発表した。これを受けて制裁措置として、最大24億ドル相当の仏製品に最大100%の追加関税を課す方針を打ち出した。シャンパンなどが制裁の候補となる。

フランスのデジタル税は、世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐのが狙い。7月に関連法案が成立した。売上高が全世界で7億5,000万ユーロ以上、仏国内で2,500万ユーロ以上のIT企業を対象に、仏国内での売上高に3%を課税するというものだ。

これについて米政府は、「GAFA」と呼ばれる同国の巨大IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンを狙い打ちにした不当な措置として猛反発。両国政府は8月、同問題での対立を避けるため、フランスが課税分の一部を対象企業に返還するという妥協案で合意したが、米トランプ大統領が受け入れず、外国の不公正な通商慣行に制裁を発動できる通商法301条に基づく制裁を警告していた。

USTRは調査報告書で、追加関税適用の候補となる仏製品のリストを公表した。シャンパンを含むスパークリングワインやチーズ、ハンドバッグ、ヨーグルト、化粧品などが含まれる。仏企業が提供するサービスも制裁対象に加える方針を示した。ワインは対象から外れた。2020年1月7日に公聴会を開くほか、1月14日まで広く意見を募り、制裁対象や課税率など詳細を固める。このため、制裁発動は1月中旬以降となる見込みだ。

仏政府は経済協力開発機構(OECD)が検討している同様のデジタル課税制度が実現するまで、一時的に独自の課税を導入することを決めたが、米政府の理解を得ることはできなかった。USTRはイタリア、オーストリア、トルコのデジタル税に関しても、政府が調査開始を検討していることを明らかにした。

仏政府とEUは米の制裁について反発している。欧州委員会の報道官は3日、同問題は世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続きによって処理するべきだとして、米の対応を批判。話し合いによる解決を求める一方で、制裁に踏み切った場合はEUが報復措置を講じる用意があることを明らかにした。