新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐり、仏製薬大手サノフィのポール・ハドソン最高経営責任者(CEO)が13日、ワクチンの供給先として米国を優先する意向を表明したことが波紋を広げている。仏政府は同氏の発言に猛反発。サノフィ側は発言が誤解されたなどと説明し、対応に追われた。
ハドソン氏は米ブルームバーグ通信とのインタビューで、サノフィが新型コロナのワクチン開発に成功した場合、「米国政府には最も多くのワクチンを事前発注する権利がある」と発言。「米国はリスクを取って投資を進めてきた」というのがその理由で、米国は自国が製造を支援したワクチンを「真っ先に入手」することを望んでいるなどと述べた。
これに対し、フィリップ仏首相は14日、ツイッターへの投稿で「ワクチンは世界の共有財産であり、平等なアクセスに議論の余地はない」と不快感を表明。パニエルナシェ経済・財務副大臣は仏メディアとのインタビューで「サノフィが利益を得るため新型コロナワクチンを特定の国に優先的に供給するのであれば、それは受け入れがたいことだ」と批判した。欧米メディアによると、マクロン大統領は19日にハドソン氏と協議するもようだ。
こうした事態を受けてサノフィのセルジュ・ワインバーグ会長は14日、仏紙フィガロの取材に応じ、「発言が誤って解釈された。米国を優先するなどばかげた話だ」と反論。ワクチンが完成すれば各国に平等に供給すると強調した。サノフィの広報担当も15日に声明を発表し、ハドソン氏が言及した米政府への「優先権」はあくまでも米国での製造に関わるものだと釈明。サノフィは各地でワクチンの量産化を目指していると強調したうえで、「ワクチン製造は国家による財政支援を通じてはじめて資金調達が可能になる事業であり、まさにこれが米国で起きたことだ」と説明した。
サノフィは4月、新型コロナのワクチン開発で英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)と提携した。両社によるプロジェクトは米保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)から一部資金提供を受けている。一方、サノフィは仏政府から巨額の税優遇措置を受けており、ハドソン氏の発言をめぐり健康保険組合連合会などから非難の声が上がっている。