欧州委員会は15日、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ欧州経済の回復と長期的な成長を下支えするための税制パッケージを発表した。EU加盟国が税収を確保して必要な対策を講じるための歳出を賄うことができるよう、税の透明性を高めると同時に課税ルールや税務手続きを簡素化し、公平・公正で効率的な課税を実現する。
税制パッケージは◇より簡素で公正な課税に向けて取り組むべき25の施策を盛り込んだ「行動計画」◇EU域内で活動する多国籍企業の税務情報を当局間で共有することを定めた「行政協力指令(DAC 7)」の改正◇より良い税務ガバナンスの構築に向けた課税に関する「行動規範」の見直し――という3つのイニシアチブから成る。
行動計画は欧州委が2024年までに実施する施策をまとめたもので、EUの課税政策が確実な税収の確保と迅速な経済回復につながるよう設計されている。具体的には税務手続きのあらゆる段階で企業の負担を軽減し、より良いビジネス環境で競争力を強化できるようにすることや、加盟国の税務当局がより効率的に情報共有できるようにすることで、EU全体で脱税や税金詐欺を効果的に防止することなどが盛り込まれている。
DAC 7の改正は、多国籍企業による租税回避を防止する取り組みの一環として、透明性を高めるための課税ルールをデジタルプラットフォームにも適用し、オンラインで物品やサービスを販売する事業者から確実に税金を徴収するという内容。各国の税務当局はプラットフォームを介して事業者が得た収入に関する情報を自動的に交換できるようになり、租税回避に対する監視が強化される。
一方、課税に関する行動規範は、主として多国籍企業の誘致を目的とした法人税率の引き下げ競争など、加盟国間の「有害な税の競争」に対処するために導入されたルール。欧州委は行動規範を拡充し、大企業に対する不当な税優遇措置を排除するとともに、国際的な課税ルールに従わず、税務面で非協力的な第三国のリストを更新することを提案している。