英が27年までにファーウェイを完全排除、5G参入容認から一転

英政府は14日、次世代移動通信システム「5G」から中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を完全排除する方針を発表した。これまで同社製品の限定的な活用を容認していたが、米国が5月にファーウェイに対する制裁を強化したことや、香港情勢をめぐる英中関係の悪化を背景に、方針転換した。

政府が14日に開いた国家安全保障会議(NSC)でファーウェイの排除を決定した。2021年以降に同社製品の新規購入を禁止し、27年までに5G通信網から全ての製品を排除する。一部で早期の完全排除を求める声もあったが、機器の交換には多大なコストがかかるため、7年間の猶予期間を設けた。

米国がファーウェイの機器は安全保障上のリスクがあるとして同盟国に5Gからの排除を迫る中、ジョンソン政権は1月、同社の参入を限定的に容認することを決めた。同社製品を排除した場合、5G通信網の整備に深刻な遅れが生じるとの判断によるもので、ネットワークの中核部分のほか、核関連施設や軍事施設など機密性の高い場所からは排除するほか、基地局など非中核部分への参入についても全体の35%を上限とする方針を打ち出した。

しかし、米商務省は5月にファーウェイに対する制裁を強化し、外国で製造した半導体でも米国製の製造装置を使っていればファーウェイへの輸出を禁止すると発表した。これよりファーウェイは必要な部品を調達できず、同社製品の安全性を保てなくなる懸念が強まった。

ダウデン英デジタル・文化相は下院で、米国の追加制裁によりファーウェイの供給体制が不確実になり、同社製品に信頼を置けなくなった」と説明。完全排除の影響については「機器の交換などに20億ポンドの追加コストがかかり、5Gの商用化は2~3年遅れる」との見通しを示した。

今回の決定に対し、劉暁明・駐英大使は「ファーウェイに対する扱いは他の中国企業も注視しており、英国に対して投資拡大に向けた信頼感を保つことが極めて困難になる」と発言。ファーウェイは14日の声明で、米国の制裁強化でセキュリティが脅かされることはないと強調。同社製品の排除によって英国のデジタル化が遅れると警告し、決定の見直しを求める方針を示した。

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