日英両政府は23日、経済連携協定(EPA)に署名した。トラス英国際貿易相が来日し、都内で茂木敏充外相と署名式に臨んだ。両国の議会承認を経て、2021年1月1日の発効を目指す。
英国は今年1月にEUを離脱しており、12月末に移行期間が終了すると、日英間では日欧EPAに基づく関税の優遇措置が適用されなくなる。このため両国は新たな貿易協定の締結に向けて6月に交渉を開始。4カ月半という短期間で署名にこぎつけた。英国にとってはEU離脱後に主要国と締結する初の貿易協定となる。
日英EPAは昨年2月に発効した日本とEUのEPAを概ね踏襲した内容で、幅広い品目の関税が撤廃される。日本製乗用車に対する関税は段階敵に引き下げて26年に撤廃する。日欧では乗用車にかかる関税をEPA発効から8年目の26年に撤廃することが決まっているが、日本側は英国との交渉で関税撤廃までの期間を短縮し、日欧と同時期にゼロにするよう求めていた。工業品では鉄道車両や自動車部品などで日欧EPAより前倒しし、発効と同時に関税を撤廃する。
農業分野では、英国が求めるブルーチーズの関税優遇措置を巡り、最後まで調整が難航した。英国は新たに低関税枠を設けるよう求めていたが、日本側は日欧EPAで認めた品目以外に枠を広げない方針を堅持したうえで、ブルーチーズを含むソフトチーズを対象に、日欧EPAに基づく低関税枠に余剰がある場合に限り、その範囲内で英国産にもEU産と同水準の税率を適用することで合意した。
さらにデジタル分野では、電子商取引に関連したデータのやり取りについて、原則として禁止または制限しないことや、関税を課さないことで合意した。また、人工知能(AI)などで活用するアルゴリズムやソースコードなどについて、政府による開示要求を禁止するルールを設けた。中国などを念頭に、国家が企業のデータを管理し、支配力を強める動きをけん制する狙いがある。
トラス氏は共同記者会見で「対日EPAは英国が再び独立した貿易国となって初めて締結する自由貿易協定だ。英国は環太平洋経済連携協定(TPP)に強い関心を寄せており、日本との協定によってTPP加盟の道が開かれる」と強調。茂木氏は「加盟に向け情報提供などで協力していく」と述べた。